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雪とJAZZ

 投稿者:shig  投稿日:2011年 2月14日(月)16時34分31秒
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  雪とJAZZ

静かな朝だった。
静かすぎて、わからなかった。
庭に面した窓のむこう、何かがいつもと違っていた。
雪、だった。
大阪での降雪は、珍しい。
窓に張り付いて、落ちてくる雪をじっと見つめていた。
雪は、軽い。それゆえ、雨のように、一斉にまっすぐ落ちてくるわけではない。
風を受け、ひとひら、ひとひら、少しずつ、異なる方へ、流れ舞う。
それでいて、その流れは、調和がとれている。
「JAZZみたいだな」呟く自分の声に驚く。
その声にせかされるように、厚手のジーンズ、セーター、ダッフルコートをクロゼットから取り出し、素早く身につける。ニットの帽子も必要だ。
JR、地下鉄、阪急と乗り継ぎ、神戸のとある駅へ着いた。
駅から歩いて10分。雪はまだ降り続いている。コートのフードを立てる。
小さなカレーショップ。オーナーは古い友人だ。
ドアを開くと、JAZZの空気に変わる。
客は、いない。
この店には、いつもJAZZが流されている。
オーナーは、笑いながら言う。
「雪の中、遠いところありがとうございます」
「雪を見ていたら、どうしても来たくなったんです」
特注の木のハンガーに、雪に濡れたダッフルコートを架ける。
オーナーがカレーコースの用意をしている間、僕は窓の外を見ていた。
いつしか風が強くなっているようだ。雪が縦横に、時に上下に舞う。
見事としか言いようがない。自然の、アート。
そして、マッキントッシュのスピーカーから流れる、アップテンポのJAZZが、
雪と共演している。
今日、雪が降って、よかった。
JAZZが聞けて、よかった。
今日、生きていて、よかった。
とりとめもない想いを、香ばしいカレーの匂いが打ち消した。
コースを片づけている間も、雪とJAZZは、
声なき歌を僕に運び続けてくれていた。

http://www3.ocn.ne.jp/~shig/poem/

 
 
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